3.11からの夢 From 2011.3.11-2016.3.11
託された思いをあとがきにかえて

震災後を生きる、すべての人へ。あなたの「3.11からの夢」は何ですか?

この本の制作をはじめたのは、震災から3年目の春のことでした。そのころの私は、現地の状況もいまひとつわからず、震災に関する基本的な知識もまったくなく、ボランティアさえ行ったことがない。東北は、私にとってなんの縁もない土地でした。遠く離れた関西で目にするのは、現地の明るいニュースばかり。だからもう大丈夫なんだと思っていました。 でも、初めて向き合った被災地には悲しすぎる現実があり、そこで生きる人の苦しみは想像を超えていました。思うように進まない復興。出られる見込みのない仮設暮らし。受け入れられない放射能問題…。この本をつくるには、1人でそこに飛び込んでいくには、相当な覚悟が必要なのだと知りました。 しばらくは覚悟のつけ方がわからず、当時何もしなかった後悔と無力感にさいなまれ、泣いてばかりいました。そんな私に力をくれたのは、この2年間で出会った、たくさんの東北の方々、東北を思う方々でした。泣きながら、嗚咽まじりに亡くなった家族への思いを語ってくれた方。最初は「夢なんてない」と断られたけれど、後々に「夢が見つかったんだ」と連絡をくれた方。「自分が聞く勇気はないから、代わりに母の夢を聞いてくれませんか?」とお願いしてくれた方。「いまの東北に必要な力だね」と言ってくれた方。「震災のとき十分なことができなかったから、せめて」と協力してくれた方。「この本にぴったりだと思うから」と、たくさんの人を紹介してくれた方。 ここには書ききれないほど、多くの人の顔が浮かびます。かけてもらった言葉が、頭と心を巡ります。 いつしか『3.11からの夢』という本は、掲載させていただいた方はもちろんのこと、たくさんの人の思いが託された本になってゆきました。「震災と向き合いきれなかった人が、もう一度、震災と向き合うきっかけをつくりたい」そんな私の小さな思いは、次第に3.11を伝えていく覚悟になり、関わってくださったみなさんが、大きな夢へと育ててくださいました。本当に、本当に、ありがとうございました。 私はこの本を「震災後の日本をつくる1冊」にしたい。 3.11からの夢を考えることで、震災と自分の人生を見つめ直すことができる。3.11からの夢を見つけることで、これからの人生を強くやさしく、生きていける。そう胸を張って言えるのは、この5年間、震災と向き合い、踏ん張り続けてきた人たちの夢を見つけて生きる、等身大の姿があったからです。 震災と向き合うこと、被災地に寄り添うことに、正解はありません。自分の人生を見つめ直すこと、今一度これからの生き方を考えることは、未来を描く希望になるはずです。 何をはじめるにしても、遅すぎるということはない。だから自由に、考えてみてください。 3.11をはじまりに変え、震災後の生き方を考える。 この本が、そのきっかけになることを願って。 末永光

この本の制作にあたって、ご協力くださったすべての皆様に心より感謝申し上げます。編者:いろは出版 末永光(写真中央)

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