かけがえのない思い出を子どもたちに。『おなまえひらがなえほん』制作秘話(後編)


出産祝いやお誕生日のプレゼントに人気の『おなまえひらがなえほん』。絵本を組み合わせて名前を贈るというアイデアを生み出した詩人のきむさん。そして、きむさん監修のもと2年という年月をかけてアイデアを形にしていった企画・デザイン担当の西村夏南さん。二人がたっぷり語る制作秘話。後編では、デザインのこだわりや制作時の裏話をご紹介します!

 

赤ちゃんを迎えた家族に贈りたい

かな:デザインについても大事にしていたことがあるので、ぜひお話ししたいと思います! 私自身がデザインでこだわったのは、認識しやすいということ。ユニバーサルデザインの書体を探して小さな子どもにも読みやすいものを選んだり、赤ちゃんが認識しやすい明るい色をたくさん使ったり。イエローをキーカラーにしたのも赤ちゃんが好きな色とされているのが理由です。

きむ:ながーく伸びるじゃばらの形も小さな子どもたちに楽しんでもらえるポイントだね。昔、ロンドンの美術館でじゃばらの絵本を見て、すごくいいなと思ったんだけど、制作するのは今回が初めて。最初に作ったサンプルは折り目が割れてしまうなど、思っていた以上に難しかったな。


試行錯誤の末に完成した、じゃばら絵本

かな:設計者さんが印刷会社の方と何度もやり取りしてくれて、納得いくものができあがった時は本当にうれしかったです。じゃばらの絵本は広げて親子一緒に楽しめるし、ケースに入れておけばすっきりと本棚に仕舞えるのがいいなと思います。

きむ:ケースについては、透明にするという案もあったけど、最終的にイラストが入ったカラフルなものになって、飾っているだけでかわいいよね。


表紙の文字が見えるように丸くくり抜かれたケース

かな:ケースの表面に描かれている2羽の鳥。これはお父さんとお母さんで、子どもの名前のひらがなをじっと見守っているというデザインです。名前は親から子への最初の贈り物だから、名前に託した親のあたたかい気持ちを表現したくて考えました。

きむ:『おなまえひらがなえほん』の象徴のような存在といえるかもしれないね。


象徴である鳥の姿は絵本にも登場

かな:そうですね。絵本の最後には、子どもも含めて3羽の鳥がいます。赤ちゃんを迎えた新しい家族をイメージした3羽の鳥。出産祝いや、お誕生日など、家族のお祝いのシーンにもぴったりだなと思って、出産祝いセットのおくるみやラッピングなどのデザインにも入れました。


おくるみやギフトボックスにも現れる3羽の鳥

 

自分の名前だからうれしい! 特別感がある絵本

きむ:『おなまえひらがなえほん』のサンプルができた時、「ひ」と「な」の絵本を家に持って帰ったら、ひなちゃんが「父ちゃん、ひなの本を作ってくれたの!?」ってすごくうれしそうでした。

かな:ひなちゃんをはじめ、サンプルをもらった子どもたちがすごく喜んでくれて、私も制作メンバーも本当にうれしい気持ちになりました。実際の反応を知りたくて動画の撮影をお願いしたのですが、「いないいないばあ」という言葉が出てきた時いったん絵本を置いてお母さんと一緒に「いないいないばあ〜」と真似する子がいたりして、本当にかわいかったです。そんなふうに『おなまえひらがなえほん』で遊んでいるうちに自分の名前のひらがなを読めるようになったという子もいて驚きました!


自分の名前の絵本に大興奮!

きむ:まさに期待していた通りの反応だったね。あと、1歳の男の子がお姉ちゃんの横で興味深そうにじゃばらを広げていたり、思っていたより幅広い年齢の子が関心を示してくれていたね。

かな: そうですね。サンプルを渡した中で一番上の年齢は8歳。その男の子は絵本を手渡した時、「僕、字はもう読めるし」とクールな反応だったんです。でも、しばらくして「これ、片付けておこうか」ってママが聞いたら「僕の名前だから置いといて」って言ってくれたらしくて。やっぱり名前には特別感があるんだなと思いました。


モニター読者となってくれた、いろは社員のキッズたち

きむ:絵本の裏面を使って「ひらがな探し」をして遊んでいる動画もあったね。

かな:じゃばらの絵本をめいっぱい広げて「ひらがな探し」を真剣にしてくれていましたね。自分の名前のひらがなを見つけたら、その次にお母さん、お父さん、お姉ちゃん、おばあちゃん、おじいちゃん…と順番に探していく。家族みんなの名前を探す姿を見て感動しました。

 

かけがえのない思い出を『おなまえひらがなえほん』と

きむ:サンプルで集まった意見を参考にさらにブラッシュアップして、『おなまえひらがなえほん』が2024年1月に遂に完成しました! 僕の実体験からひらめいたアイデアが、かなちゃんのおかげで素敵なカタチになりました。本当にありがとう。『おなまえひらがなえほん』を購入いただいた方から、いろいろなお声がすでに届いているけれど、喜んでくださっているのが伝わってきて本当にうれしいね。


赤ちゃんの記念撮影にぴったりなマンスリーカードも同時発売

かな:オンラインショップのお客様が「とても素敵な商品」とコメントをくださったり、「出産祝いとして友人へ贈ったところとても喜んでもらえた」と嬉しいお声を送ってくださったり、感動と感謝の気持ちでいっぱいです。

雑貨ショップでは、出産祝いコーナーなどに並べていただき、年齢や性別を問わず幅広いお客様がご購入くださっているそうです。お店の写真を見せてもらうと、おすすめコメントや手描きのPOPなどがあって、とっても素敵な売り場ばかりなんです。そのおかげでプラスワンの贈り物としてもたくさん選んでいただき、本当にありがたいなと思います!

販売店の中には、紹介動画を流してくださっているお店もあって、それで興味を持ったというお客様も多いのかなと思います。実は、この動画のナレーションは絵本の設計を担当してくれた方の息子さんで、声がとってもかわいいんです。いろはショップでも公開しているので、まだ見ていないという方には、ぜひご覧いただきたいですね(笑)。


お店では全45冊をずらりと紹介(INOBUN四条本店様)


出産祝いや誕生日プレゼントに人気(オンセブンデイズ 半田店様)

きむ:出産祝いとして『おなまえひらがなえほん』をもらったという方は、最初は赤ちゃんのそばに飾って楽しんでくださっているのかな。それからだんだん1歳、2歳、3歳と大きくなってきた時、『おなまえひらがなえほん』をきっかけに言葉に興味を持つようになったり、親子で一緒に読んで遊んだり、もう少し違った反応があるはず。子どもたちが成長していく中で、どんなふうに使ってくださるのかが楽しみです。


監修を担当した詩人きむ

かな:子どもたちが大きくなった時、自分の名前の絵本をもらって嬉しかった記憶がかけがけのない思い出になったらいいなと思います。将来のお話をするなら、「濁点はありますか」というお問い合わせをいただいているので、そうしたご要望にもいつかお応えしていきたいです。


企画・デザインを担当した西村夏南

きむ:そうだね。たくさんの子どもたちに届けていけるように『おなまえひらがなえほん』をもっともっと育てていけたらいいなと思います!

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(文)村瀬真奈
(写真)日比康二 加藤はな

 

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