アナミカ・マドゥラジさん来日記念インタビュー『WE HAVE A DREAM 201ヵ国202人の夢×SDGs』


2021年に出版された『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs』。先日、この本でインド代表を務めたアナミカ・マドゥラジさんがいろは出版へ来訪されました! 海外に暮らす著者の方がいろは出版にやって来たのは実は初めてのこと。というのも、この本の制作期間はコロナ禍の真っ最中。原稿確認から写真提供、デザインチェックまですべてがオンラインで行われました。念願だったアナミカさんとの初対面を記念して、監修を務めたきむと、日本代表として夢を語った市川太一さんがアナミカさんへインタビュー。夢に向かって邁進し続けるアナミカさんの今の声をたっぷりお届けします!

 

とっつきにくいSDGsを身近なものに

きむ: アナミカさん、いろは出版へようこそ!一緒に本をつくったアナミカさんと、こうして初めてお会いできてうれしいです! 今日はいろいろお話しを聞かせてください!

太一: まずは自己紹介をお願いできますか?

アナミカ:アナミカ・マドゥラジです! 現在、スイス・ジュネーブで国連職員として平和構築に関する仕事をしており、以前はさまざまな大学や政府機関、NGOでSDGs(持続可能な開発目標)の推進に携わっていました。ありがたいことに、インドの代表として選ばれ、『WE HAVE A DREAM』に参加させてもらいました。

太一:この本では、各国一人ずつ夢を紹介しています。世界中からたくさんの夢を集めるため、SNSを使って呼びかけ原稿を公募しました。アナミカさんが本のプロジェクトを知ったのも、SNSがきっかけでしたよね?

アナミカ:私が最初に見たのは、Facebookの投稿だったと思います。私が参加しているSDGs関連のグループで、このプロジェクトに関する投稿がシェアされていたんです。SDGsの取り組みとして、新鮮でユニークな試みだなと思いました。

私が国連のSDGsのプロジェクトに関わっていた頃だったかと思うのですが、SDGsは自分に関係ないと言う人をたくさん見てきました。SDGsは「専門用語だらけで複雑」「理論的な概念を並べ立てたもの」「国連の中だけのもの」というふうに思われていたんです。でも、この本のプロジェクトでは、SDGsを自分ごととして捉え、世界中から夢を集めて国境や文化の違いを超越しようとしている。理論的でとっつきにくいと思われがちなSDGsを、みんなにとって身近なものに、日常生活の一部となるようなものに変えていこうとしている。そのことにとても心を動かされ、このプロジェクトに参加したい!と思いました。

 

インドそして世界が共感できる夢を

きむ:の原稿のタイトルは「誰もが尊厳を持って生きるために」でしたね。初めて原稿を読んだ時、アナミカさんの夢にかける想いがぐっと伝わってきて感動しました! 原稿を書くのは大変でしたか?

アナミカ:簡単ではなかったです。何度も何度も書き直し、言いたいことを絞り込んでいきました。自分の夢とはいったい何なのかを考えないといけなかったし、自分がこれまでの人生で経験したことから多くの人が共感できる課題を探しました。

もし選ばれたら私がインドを代表することになるから、インドが抱える課題に真正面から向き合い、インドの人たちが共感できるような夢を伝えたいと思いました。それと同時に、他の国の人たちが読んでもインスピレーションを得られるような内容にしたいと考えていました。

太一:実は、インドからの応募数はどの国よりも多かったんですよ。素晴らしいストーリーがいくつもあったけれど、アナミカさんの原稿を読んだ時、そこに込められた想いやメッセージがこの本を通して伝えたいことにぴったりだなと思いました!

 

予想外だった地元新聞からの取材

太一:完成した本を受け取った時は、どんな気持ちでしたか?

アナミカ:もう大興奮でした! カバーデザインができあがっていく様子や日本語版の制作過程を太一さんが定期的に報告してくれていたので、制作チームの想いや熱意をずっと感じていて、本が完成するのをワクワクしながら待っていました。

太一:インドの有名新聞から取材を受けたんですよね?

アナミカ:私にも予想外のできごとでした! ローカルな言語で発信を行う地方紙、それから英字の全国紙にも記事が掲載されました。いくつものメディアが本を紹介してくれたのは、『WE HAVE A DREAM』に込められたメッセージがインドの人々の興味をかきたてるものであったからだと思います。

 

国連で働いて夢が広がった

太一 :本の制作時も国連の仕事に携わっていたけれど、当時は同時に学生でもありましたね。本格的に国連で働きだしたことで、夢に変化はありましたか?

アナミカ:本のために原稿を書いたのは3、4年前のこと。本が出版された当時は学生で、修士課程に在籍していました。 学生ではなくなり、周りの環境も私という人間も大きく変わりましたが、私の夢は今も変わりません。

すべての人が尊厳ある生活を送れるように闘うこと、構造的不平等や構造的貧困、構造的不利益に立ち向かうこと、それらがいつも私の行動の核となっています。 夢の本質となるものは変わりませんが、私の願いや夢にいくつもの層が増えていったような感じですね。

太一:夢を今もずっと追い続けているんですね!

アナミカ:どちらかといえば、夢が少し広がったと言えるかもしれません。というのも、気候変動や、貧困、武力紛争、戦争、移住など、さまざまな国際問題が存在し、それらが互いに関わりあっていて、ひとつの問題に取り組もうとすると、往々にして他の問題にも取り組まなければならないということが分かってきたからです。

 

視点を変えて問題に取り組む

太一:夢だけでなく目標についても聞きたいです。『WE HAVE A DREAM』の中では夢と目標の違いを説明していますが、アナミカさんの目標はどうですか?

アナミカ:私の夢と目標もまったく違うものだと思います。 夢は願望であり、それは何年も先につながるものかもしれません。 一方、目標は、おそらくもう少し集中的なもので、現在の近くにあるものだと思います。

現時点での私の目標は、自分の仕事をしっかりとやり遂げ、自分の意見を伝えてチームをサポートすること、そしてまずは私たちが働いている地域で良い影響を生み出すことです。日常において、自分の行動が私自身より大きな何かにつながること、それが世界にとってプラスになっているというのが目標なんです。

太一:グローバルな問題が深刻だと分かっていても、日本とは遠い国で起こっていること、自分とは関係のないことと考えてしまう人も少なくありません。自分ごと化するにはどうしたらいいですか?

アナミカ:たとえば気候変動について考えてみてください。自然災害が起こりバングラデシュやパキスタンで大きな被害が出たと聞いても、遠い場所で起こっていることだから自分には関係ないと思う人がいるかもしれません。もしくは、今すぐに対処する必要がないから自分には関係がないと思う人もいるかもしれないですね。でも、それは、次の次の世代にとって重大な問題となります。

グローバルな問題は地理的、時間的に遠いところにあるように思われることがありますが、本当はまさに今起こっている問題です。目の前にある日常生活に影響を及ぼすことがあります。自分の国や経済、そしてひとりひとりの日常生活に影響があるかもしれないと認識をあらため取り組んでいく必要があると思います。

 

世界中から集まった夢が教えてくれたこと

太一:『WE HAVE A DREAM』の中では、「私たちはお互いの夢から何を学ぶのか?」という問いを投げかけています。この本を読んでアナミカさんが学んだことはありますか?

アナミカ:この本から学べることは本当にたくさんあります。SDGsはグローバルなもの。 私たちみんなが取り組まないといけません。そのことをこの本は教えてくれます。

それぞれの夢を見ていくと、夢を伝えようとするとき、そこには個人が経験した出来事があります。同時に、夢は国や文脈、場所を越えるものでもあることも明らかです。名前や場所が違っても、みんなの夢には共通するものがある。少なくとも、夢の核となるものは同じ。みんながより良い世界を望んでいるのです。

その夢を叶えるために、さまざまな国からさまざまな人々が集まり、共通の言語やフォーマットを持つことができます。それが私にとって最大の学びでしたし、私自身がこれまで考えてきたことをさらに強く感じるようになりました。

 

誰かの夢ではなく、私たちみんなの夢

太一:最後に、この本を読んでくれた読者さんと、未来の読者さんへ向けてメッセージをお願いします。

アナミカ:まず伝えたいことは、希望を持つこと、どんな状況でも良くできると信じることです。この『WE HAVE A DREAM』は、まさにそんな気持ちを表したものだと思います。

地球規模のとても複雑で大きな課題に直面しているとしても、まず何かを成し遂げるには、今とは違う世界やより良い世界を望む力が必要です。 だから、読者の皆さんに希望を持ち続けてほしいということを伝えたいです。

そしてもうひとつ伝えたいのは、本に書かれているのは202人だけの夢ではないということです。私だけの夢でもないし、太一さんだけの夢でもない。すべての人の夢であり、私たちみんなの夢。 もしこの本を読んだなら、感じたインスピレーションを自分の中に取り込めることを知ってほしいです。 こうした夢を自分のものとして感じてほしい。 そして、自分の身の回りから何かアクションを起こしてもらえたらと思います!

きむ:素敵なメッセージをありがとうございます。今日は本当にありがとうございました。 これからも夢に向かってお互いがんばりましょう!

 

(文)村瀬真奈
(写真)日比康二 加藤はな