アイデアと向き合う人を応援する。アイデアを磨く時間が輝くビジネスノート「Quarry」誕生秘話
いろは出版から新たに生まれたビジネスノートシリーズ、「Quarry(クオリー)」。fragments log、notebook B6、notebook B5wideの3タイプのノートと、ノート整理に便利なシールをラインナップしています。コンセプトは「アイデアを磨く時間が輝くビジネスノート」。そのコンセプトにはどのような想いが込められているのか、Quarryの企画を担当した河北亜紀さんにお話を伺いました。
自らの体験から生まれたQuarryのアイデア
◆Quarryというブランド名にはどんな意味があるのですか?
Quarryは英語で「採石場」という意味の言葉です。アイデアの採掘がはかどるように、という想いを込めて名づけました。
Quarryを企画する上で大切に思っていたのは、誰のどんなアイデアからも必ずその人らしさをキラリと感じ取れるということ。興味を持っていること、見聞きしたこと、学んだこと、生まれてから今までの経験…その人らしさの粒たちがアイデアのなかには隠れていると思っています。
その小さな粒がアイデアになっていく様子は、原石が誕生し、磨かれ、宝石になっていくプロセスと似ているなあとイメージが膨らみ、「石」や「宝石」をモチーフとしたノートを作りました。
◆「アイデアを磨く時間が輝くビジネスノート」の企画はどのように生まれたのでしょうか?
きっかけは、企画部で「デジタル機器と併用したくなるステーショナリー」というテーマでアイデアを持ち寄ることになったときのこと。最近はスケジュールや議事録をデジタルで管理する人も多いですよね。そんな人にも使ってみたいと思ってもらえるステーショナリーのアイデアを考えてみよう、ということになったんです。
「いいアイデア思いつくかな」とノートに向かっていた時、まさにその時の自分 の状況から「アイデアを出す時はまずアナログで、ぼんやりとしたイメージや気 持ちを自由に書き出すことが多いかも」ということに気づきました。それは私だけではなく同じような人がたくさんいるのでは、と考えが広がり、「アイデア」を切り口としたノートのアイデアを提案しました。
(Quarryの始まりとなったアイデアのメモ)
◆ こんなアイデアノートにしたい、というイメージは最初からありましたか?
アイデアをテーマにしたノートを作りたい、と思ったときにまず浮かんだのが、いいアイデアを出すために黙々と机に向かって何かを書いている仲間の姿でした。何か理論的な発想術を提案するようなノートというよりも、そういうアイデアと向き合う孤独な人を応援したいという気持ちが強かったです。
「孤独」というと大袈裟に聞こえるかもしれないですが、アイデアを一人でこんこんと考えている時は自分との戦いだなと思っていて。働く人には、いつまでに提出しなければならないという締切があって、その締切までにいいアイデアを出せるかが不安だったり自信がなかったり、どうしても誰かと比べてしまう時もある。在宅ワークやフリーランスだと、パッと相談できるような仲間も周りにいないかもしれない。そんなふうに自分と戦う人が「よしっ!」とスイッチを入れられるようなノートにしたいと思っていました。
アイデアと向き合う人を応援する3つの要素
◆応援する気持ちをどのようにノートに落とし込んでいったのですか?
デザイン、使い心地、言葉。この3つの要素で応援しようと考えました。
Quarryのデザインでは、女性が商談中にさっと出せる品のある佇まい、知的さを感じるカラーバリエーション、持っていて気分が上がるようなキラッと感を目指しました。近年はシンプルなデザインが好まれがちですが、何かカバーデザインにQuarryらしい愛されポイントを作りたくて、ロゴを少し大きめに入れたいとデザイナーさんに依頼したところ「採石場」をテーマにしたロゴをデザインしてくれました。
ロゴをよく見てもらうと、アイデアを採掘する人が歩いていたりお花が咲いていたりして、とっても素敵なイラストになっています。最初に提案してもらったラフ段階のロゴには人やお花は描かれていなかったのですが、こうした要素を足すことで、アイデアを採掘する人を応援するというメッセージを表現してくれました。
(最終ロゴと、ラフ段階のロゴ。人と花が加わったことで柔らかな印象に)
◆「使い心地」でこだわったのはどういうところですか?
「自由なアウトプットの邪魔をしない」という引きの視点です。 Quarryには3タイプのノートがありますが、180度フラットに開く糸かがり製本 や、リングが手に当たりづらいセパレート式リング製本など、ストレスなくのびのび書ける製本を採用しています。用紙は筆記性に定評のある「キンマリSW」。引っかかりがなく思うままにペンを走らせることができて気持ちがいいんです。
フォーマットも引き視点でシンプルに。でも、日付とタイトルを書けるスペース があったりと、ノートのタイプごとにさりげない工夫を凝らしています。方眼の色はグレーやブルーが一般的ですが、Quarryは柔らかいベージュの方眼。採石場 の砂の色をイメージしています。ベージュは心をほぐしてくれる優しい色味でもあるので、リラックスしてアウトプットができるのではないかと思いました。
(のびのびとアイデアを書き出しやすい仕様を追求)
◆「言葉」のこだわりについても教えてもらえますか?
「アイデアはあなたらしさから生まれる」。店頭でノートと一緒に展開する販促物や、Quarryのサイトなどでこの言葉を届けています。この「あなたらしさ」をQuarryはとても大切にしています。
世の中の人に愛される商品やサービスを考えようとする時、トレンドに頭が行きがちになると思うんですけど、それだけだとやっぱり新しいものは生まれにくいだろうなぁと思っていて。たくさんの人に届けるものを発案しなければならないときこそ、自分の興味や考え、経験を活かして「自分らしさ」を出せば、それが商品やサービスの独自性になっていくのではないか。「自分らしさ」と「きっと世の中の人が共感してくれる!」というイメージをいいバランスで合わせていけると、独自性もありながら愛されるものが生まれるんじゃないかなあと考えています。
「世の中に自分は一人しかいない」という当たり前が、実はかけがえのない武器である。そういったメッセージをほどよい温度感で届けられたらいいなとずっと考えていて、「アイデアはあなたらしさから生まれる」というコピーを書きました。
アイデアの欠片を採集するfragments log
◆アイデアの鍵となる「あなたらしさ」がどんなものかって自分では気づいていない人も多そうです。
そうですよね。でも、自分だけのアイデアの欠片は、日々重ねる小さな経験の中にいくつも隠れていると思うんです。「アイデアはあなたらしさから生まれる」というメッセージを届けるだけでなく、「あなたらしい」 アイデアが生まれるきっかけを商品そのものからも作り出したくて、手のひらサイズの「fragments log(フラグメンツログ)」を作りました。これは、見聞きしたことや感じたことを自由に書き留めていくログノートで、フラグメンツは「欠片」という意味です。
「最近こういう言葉が流行ってるんだって」と教えてくれた同僚の話や、「こういう考え方が大事だよ」と教えてくれた先輩の話など、ちょっとでも「へえ~」と思ったことはなんでもログする。それをQuarryでは「アイデアの欠片採集」としています。
欠片をログして寝かせておくと、ある日ほかの情報と結びついてアイデアが生まれることがあります。原子の粒が結晶化して、宝石になっていくプロセスと似てますよね…!
そういうアイデアの欠片は、仕事のオンオフ関係なく日常に溢れているので、プライベートの時の小さなバッグにも入れやすいように設計しました。1日1ページ書いても半年分使えるページ数があるのも嬉しいし、薄すぎず厚すぎずコロンとした 絶妙な厚みが可愛いんです。
(便利でかわいい手のひらサイズのfragments log)
ユニークで便利な、石の形のシール
◆Quarryにはシールもありますが、なぜノートと一緒にシールを作ろうと思ったのですか?
私はよく、ノートに埋もれた情報を目立たせたいときに事務用品の丸シールを貼るんです。「磨けば光るかも!」と思ったアイデアにシールを貼っていく作業は、原石を採掘しているような気分になります。マーカーなどで目印をつけたら済む話なのでは?と思われるかもしれませんが、シールは立体感があるので目立ちやすいし、何よりシールを貼るのって楽しいんですよね…(笑)。
Quarryのシールは、ブランドの世界観に合った「石」のようなユニークなデザインに仕上がりました。実は、Quarryのデザインが始まった頃、お店で石を買ってきて、デザイナーさんのデスクにぶわっと置いておいたんです。「この石は何かに生かしてくれっていうメッセージ?」って聞かれた時はただ「いや、気分が上がるかなと思って。何か生かせると思った時に生かしてください!」という感じでお伝えしていたんですけど、できあがったシールのデザインを見たら、一つひとつ色も形も異なる個性的な石の特徴が見事に表現されていて驚きました。
可愛いのはもちろんなんですが、ノートとシールを一緒に使うことで、インプットやアウトプットがより快適に楽しくなるように意識しました。コモンプレイスやバレットジャーナルといったノート術にも活用してもらえます。
(ノート整理やメモどめに使える、石の形がユニークなデザイン)
あなたのアイデアを磨く時間に
◆最後にQuarryを使ってくださる方へのメッセージをお願いします。
Quarryのアイデアを初めて仲間に話した時に、「アイデアって不安だよね」とみんながポロポロ言いながらメッセージに共感してくれたことがとても印象に残っています。それまで「自信がない」とか言い合ったことはなかったけれど、実はみんな同じ気持ちを持っていることを知りました。そんな私たちと同じように、アイデアに自信がないけど頑張りたいと思っている世の中の人たちに、「Quarryを使っていたらなんか頑張ろうって思える」と感じてもらえたら…あなたのアイデアを磨く時間が輝けば、とっても嬉しく思います。
(インタビュー)村瀬真奈
(写真)加藤はな