2019年5月24日(金)全国の書店・雑貨店で発売される、探し絵本「ちびストーリーワールド」。
昨年発売された絵本「イマジンドリル」に引き続き、人気雑貨ブランド「AIUEO」のデザイナーが手がけた探し絵本。
今回は作・絵を行なったデザイナーのゆきちゃん(いといゆき)にお話しを伺いました。
(AIUEOデザイナー ゆきちゃん)
− 企画を思いついたきっかけを教えてください
2017年にAIUEO京都北山店が閉店してしまうとき、描いていた絵を社長がたまたま見てくれていて、「この絵でさがし絵本をつくったらおもしろいんじゃないか」と声をかけてくれたことがはじまりです。
(北山店閉店のときに描いた絵)
絵本をつくることは私の夢でした。
絵本は開くたびにどきどきするし、何が起こるのか、どんな世界がひろがっているのだろうと、とてもわくわくします。
絵と物語がつまっていることにすでに感動しますが、ただ紙でできた四角いものに、子供から大人まで楽しめて、誰かにとっては宝物にもなる不思議な魅力のあるものです。
いつか絵本を作ってみたい、作るだろうな、作ろう!と抱いていましたが、今回のような「さがしえほん」という形で絵本に関われるとは思っていませんでした。
はじめは「絵本はもっとシンプルで面白いものだ」と、さがし絵本をつくることに戸惑いがありましたが、私はとにかく人をたくさん描くことが好きで、ストーリーを考えることが好きで、好きなことを活かせるきっかけをもらえたことに気づいて、それからは今までにない最高に楽しい探し絵本にしよう!と自分にできることを100パーセント、それ以上つめこんで形にしました。
− どんなところにこだわりましたか?
この絵本はながめているだけでも楽しくなるように心がけています。
ポイントは普段の生活で面白いなと思えることや何か気になるな、綺麗だな、これ好きだな、という発見をこの絵本から感じてもらいたいという思いです。
ちびの世界は
「日常に近くて、よく見るとヘンテコな世界」
「だれでもそこに行けること」
「ひとりひとりにストーリーがあること」
「主人公がいないこと」
を大事にしています。
どのページをめくっても、その世界のその場所でいろんな楽しい気持ちに出会えるように、ちびのコンセプトを考えました。
− 大変だったことはありますか?
色です。
このちびの世界は、いま私たちがいる世界とほとんど変わらない世界にしたかったので、絵に輪郭線がありません。
そしてどのちびも主人公であるように、手前にいても奥にいてもちびの大きさが変わらないように描いています。
そのため、ちび一人ひとりがその場所にいるように見えるようにするためには色と色の差で見せる必要がありました。
背景とちびの色が近かったり、たくさんのちびが重なり合っていると、ちびが見えなくなってしまうので、色の組み合わせにとても苦労しました。
下書きはできていても、色の組み合わせが決まらないと進まないので色塗りにはとても時間がかかりました。
色を塗りながら、ひとりひとり顔や影をいれていき、だんだんちびがそこに存在してくるととても嬉しくて、時間はかかるけれどとても楽しい時間でした。手をとめて完成を決めるのが難しいほどでした。
そして、色については絵を描く上だけでなく、印刷でも大変でした。今回ちびの世界を描くのに、色の重なりが綺麗でグラデーションがかけやすいアルコールマーカー(MARVY le plume)としっかりとした発色の油性色鉛筆(KARISMA COLOR)を使用しています。
おかげでとても鮮やかで明るく楽しいちびの世界ができました。
この原画の鮮やかさを表現するためには、特殊な印刷と技術が必要で、印刷会社の方と何度も相談して何度も試してもらって、やっと色鮮やかに描いたタッチそのままに、使った画材の特徴も活かした絵本ができました。
ちびストーリーワールドは色にこだわった絵本とも言えます!
− 嬉しかったことはありますか?
私は絵を描いたり、ストーリーを考えたりするのが好きなだけで、得意かどうかもわからないし、自分がおもしろいと思っている感覚が、一人よがりなのかもしれないと思うこともありました。
ですが、一緒にこの絵本をつくってきたチームの2人(ほんちゃん・かわきち)はアイデアのときや下書きから、すっごく楽しそうで、じっくり見てくれて、私がちょっと込めたおもしろポイントを見逃さずに見つけてくれて、むしろ無意識に描いたことからもひろってくれて、どんどんちびの世界がおもしろくなっていきました。
(左:かわきち 右:ほんちゃん)
私は結構こまかく物事を考えないと納得がいかなくて、よく悩むし、よく迷うし、よく考えたくて、それによって前に進めないこともよくありました。
一緒に足をとめて悩んで納得できる答えを一緒に探してくれるかわきちと、何が大切なことなのかはっきりクリアにして前に進めてくれるほんちゃんと、2人のおかげで自信を持って取り組むことができたし、思いっきり納得がいくものにしよう!ととことん待ってくれて背中を押してくれました。
ちびの世界を作り上げることができたのは2人のおかげです。
一緒にものづくりをしていて本当に楽しかった!
− 面白いエピソードがあれば教えてください
この絵本をつくるのに1年と10ヶ月かかりました。
(「ウォーリーを探せ」は確か1年半制作にかかったと展示会を見に行った時にキャプションに書いてあったので、ちびはウォーリーを超えました。制作時間が。)
時間をかけて自由に作らせてもらっていたこの絵本にもついに発売日も決まって、制作も佳境、とうとう最後の大トリ、表紙の制作で事件は起きました。
ちびの絵は見開き1ページ描くのに10日かかるところ、表紙は一番大きいのにも関わらず5日しか作業日が確保できませんでした。もうこれは間に合わないのではないか…誰もが思いました。私はとにかく描き進めるしかなかったので、終わらないことは1mmも考えずに全力で進みました。
そうして訪れた入稿日の4月某日。
終わりませんでした。
入稿へ向かう京都から東京への新幹線の中で描きました、表紙。
(新幹線の中の作業風景)
実は新幹線でものづくりしたのはこれで2度目。
1度目はAIUEOの入社試験のとき。
やりたいことが間に合わなくて、新幹線の中でぎりぎりまで切ったり貼ったり作業をしてました。
おかげでこうして夢だった絵本もつくることができているんだな、と懐かしく思い出していました。(それどころではないのですが)
まさか、また、新幹線で作業するとは思っても見ませんでした。もうしません。
そんな表紙ですが、描いている時は今までのページで一番楽しかったです。絵本の中にでてくるちびが「おーい!ここだよ」とこれからちびの世界へいくみんなに呼びかけています。表紙のちびはどのページのちびか、ぜひおまけとして探してみてください。
− どんな人に読んでもらいたいですか?
ひとりでもみんなでも、子供同士でも親子でも、地球人でも宇宙人でも、子供でも大人でもどっちでもない人でも、みんなに。
みんなに、ちびの世界に遊びに来てもらいたいです。
−「ちびストーリーワールド」を読んでくださる方へメッセージを
ちびの世界をみつけてくれてありがとう。
「ちびストーリーワールド」は探し絵本という形のいつでも遊びにいける場所です。
だれでも主人公になれるということ。
ふしぎは常にそこにあるということ。
楽しい気持ちは心地よいということ。
そんなことを「ちびストーリーワールド」を通して感じてもらえたら嬉しいです。
そしてストーリーを自由にふくらませて、自由に遊んでください。
とっておきを見つけたら、こっそり教えてください。