夢を描く人々の「人間らしさ」をデザインで表現。『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs』


6月2日に出版した書籍『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs』。

2006年発売の『1歳から100歳の夢』からスタートし、好評を博している「夢の本シリーズ」では、中学生や高校生、アスリートなど、これまでさまざまな人の夢を集め、世の中に届けてきました。今作は、日本を飛び出し世界へ。

世界201カ国・地域の人々の夢を集めた一冊ができました。

ずっと「夢」というものを大切にしてきたいろは出版の代表であり、この本の制作リーダーであるきむさんが、「聴く耳」を持ってインタビュー!

第三回は、544ページにも及ぶこの本のデザインを担当したデザイナーかなさんにお話を伺いました。

 


以下、かなさんときむさんの対談形式でお送りします◎


 

地球上で暮らし、夢を描き、生きる人々の「人間らしさ」をデザインで表現したい。

 

きむ:『WE HAVE A DREAM』の制作についてインタビューするため、かなちゃんにも「聴く耳」を持ってきました!
かなちゃん、よろしくお願いします!あらためて、この一年半どういう気持ちでこの一冊をつくってきてくれましたか?

 

かな:きむさん、よろしくお願いします!

この本のデザインは、企画・デザイン部の本田さん(後日インタビュー公開予定)がディレクター、私がデザイナーとして二人三脚で進めました。

どんなデザインにするか考えるにはコンセプトが大切なのですが、本の制作が始まる前に発起人の太一さんとお話ししたとき、「『One World in One Book(一つの地球を一冊の本に)』を形にしたい!」と強くおっしゃっていて、それがすごく心に残ったんです。本田さんからも「この言葉にいろんな表現のヒントが隠されているんだよ」とアドバイスをもらい、どんなデザインがいいか、とことん考えました。そして、模索する中でひとつ感じたことがあったんです。

 

きむ:その一つとはなんでしょうか?

 

かな:「人間らしさ」をデザインで表現したいなと思ったんです。

なぜそう思ったかと言うと、この本に描かれている夢は全部綺麗な夢というわけではないんですね。彼らが経験してきた辛い気持ちや、このままではいけないという悔しい想いから全ての夢が描かれています。「One World in One Book」という言葉の意味はすごく広いと思うんですけど、本書において一番大事なのは地球上で暮らし、夢を描き、生きる人々の存在だと思っていて、そこには「人間らしさ」やある意味泥臭さみたいなものがあるんじゃないかなと感じていました。その「人間らしさ」をデザインに落とし込むにはどうしたらいいのか。辛いとか悔しいという気持ちで夢を描いているからこそ、心の底から湧き上がる熱いエネルギーをデザインで表現できたらいいなと思いました。

 

きむ:デザインによる「人間らしさ」の追求だよね。

特にここはこだわって表現できたなと思うことはありますか?

 


作家チームWORLD1による似顔絵の原画

かな:特にこだわったところは二つあって、一つはカバーにもなっていますが、代表者202名の似顔絵をすべて手描きしてもらったというところです。似顔絵は、私たちの会社の作家チームWORLD1にお願いしました。その結果、すごく素敵な作品が集まり、今回その似顔絵がデザインに欠かせなかったなと思っています。作家さんたちの似顔絵は、みんな人の手を動かしているからこそ生まれる表現です。それによって本書のデザインで大切にしている「人間らしさ」を存分に表すことができたと感じました。

作家さんたちもこの本の制作に参加することを大切にしてくださって、絵を描くときは必ずその人の夢を読んで向き合って、共感して絵を描いてくださったんです。計14名の作家さん(アシスタント含む)に描いていただいたのですが、完成した絵を一人ずつ渡しにきてくれるときが、すごく楽しみで嬉しかったですね!

 

きむ:今回は各作家さんに似顔絵のタッチも描き分けてもらったよね。

 

かな:そうですね。作家さん一人につき2〜3種類のタッチをお願いしました。約40種類のタッチを202人に振り分けていったのですが、それがすごい大変な作業ではありましたね。
ですが、これをやりとげたからこそ、カバーだったり本書のデザインにおける大事な部分をちゃんとつくり切れたのかなと思っています。

 

きむ:「カバーのデザインが可愛かったので思わず買いました!」という声もあったもんね。

 

かな:嬉しかったですね。似顔絵がないとこのデザインはできなかったので、作家さん一人一人のパワーが出ているからこそ読者の方にも伝わったんだと思います。

きむ:そうだね。他にこだわったところはどこでしょうか?

 

かな:もう一つこだわったところは、各コンテンツのタイトルやメインページの見出し、国名も手描きにしました。「人間らしさ」を出したかったので、既製のフォントではなく手で描くことで、人も一人一人違うように、文字も一つ一つ違うようにしたかったんです。

一文字ずつ手描きするのは私自身初めての方法だったのですが、何度も試して、結果的に自分が納得いくところまでできたのはよかったと思います!

 

一つ一つが想像を超えたデザインに。

 

きむ:イメージから形にしていく中で、完成してみて想像を超えたところはあるかな?

 


カバーデザインのラフと完成したカバー

かな:私はあらかじめ完成形をイメージするよりも、実際に手を動かしていって見えたものが多かったので、想像を超えたものはたくさんありましたね。
書籍のデザイン自体初めての経験だったので、想像を超えたところというと、ほぼ全部と言ってもいいくらいです!(笑)

あらためて制作時のデザインラフなどを見てみると、「よくここまで変わったな!」と思うくらいの振り幅があって、一つ一つ、その都度想像を超えながら制作してきたんだなと思います。

また、1人でデザインしたというよりは、似顔絵のWORLD1、編集チームや、ディレクションの本田さん、発起人の太一さんと依文さんと、いろんな人の熱い想いや意見を聞きながら進めて行ったので、みんなでデザインしたという感覚が大きいです。そこが新しい経験でもありました。

 

きむ:そうだね。WORLD1ともコラボレーションすることで、最初のイメージをはるかに超えてるような良い化学反応が起こったよね!(笑) みんなの熱い想いを一つにしてくれて、熱量を持ったものができて感謝です!

では、次の質問ですが、制作する上で、印象的な出来事はありましたか?

 

かな:カバーのデザインの方向性が決まった時ですね。先ほども話したように、今回いろんなタッチの似顔絵を組み合わせてカバーになっていて、油絵だったり、色鉛筆だったり、どんなタッチがあったらいいのかまで、アシスタントの子と話し合って考えました。そんな試行錯誤の中、ある時「これでいけるかも!」と閃いた時があって。それをみんなに見せたところ、全員「これだ!」って意見が一致した瞬間がすごく印象に残っています。

みんな各々の意見があって、合わないこともあったり、自分なりのカバーのイメージも持っていたと思うんですけど、そんな中、みんなの意見が一致して喜んでくれたことが嬉しかったです。

 

きむ:ちなみに僕の依頼したイメージは「圧倒的な存在感があるカバー」だったね!それもまさに表現してくれたものでした。

本って言葉でつくるんだけど、このカバーは、デザインの力で言葉を超越したものを出してくれた。みんなの言葉を超えた突き抜けたものを提案してくれたから、みんな「これだ!」ってなったんだろうね、素晴らしい体験やったね!

 

職業は夢のゴールではない。デザイナーとしてどんな未来を描きたいか。

 

きむ:この制作を通じて一番学んだことはなんですか?

 

かな:あらためて夢を持って生きることって大切だなと感じました。

きむさんが「職業は夢のゴールではない」とよくおっしゃっていたのを思い出しました。また本書の516ページにも「夢とは、その山頂で見たい光景であり、山頂に立った時に見える景色だ」と書いてあるのですが、私自身、デザイナーになることを小さい頃から夢見ていたけれど、デザイナーになってどんな未来を描きたいのかということを今まで考えたことがなかったんですね。

ですが、本書の各国代表者の夢を読むと、やはり職業というのは通過点で、みんなそこからどんな未来にしていきたいかということが描かれていました。私もデザイナーになった今、デザイナーとして何をしたいかを考え、「夢見る未来を実現しようと生きること」が大切だということを学ばせてもらいました!

 

 

きむ:デザイナーというクリエイティブな仕事は、イメージしたものを表現していくものなので、ある意味毎日、夢を叶える連続の仕事かもしれないね。

この本の夢の中で、かなちゃん自身が特に共感した夢はありますか?

 

かな:私はガンビアのファトウマタ·L·カッサマさんの夢が衝撃的でした。
彼女は「生理の貧困」について書いてくださっています。

彼女の暮らす地域では、月経や性、生殖の健康に関する全てがタブーとされていて、月経管理に必要な設備、綺麗な水やトイレ、ゴミ箱の不足が問題になっているという内容が書かれていて、その中でも一番びっくりしたのは、彼女は学校で昼食をとるために親からもらっていたお金を貯めて生理用品を買っていたということでした。

女性にとって生理的な現象であり、こどもを生むための大切な現象がタブーとされていることが衝撃で、日本では当たり前のことが、暮らす地域が違うと当たり前でないということを痛感しました。看護師である彼女がその問題に立ち向かい、生理用品の支給などの活動をしているということを聞いて、私も誰かのために何ができるかをあらためて自分に問うきっかけになりました。

 

ページをめくれば、きっと生きるヒントが見つかる。

 

 

きむ:最後に読者の方に伝えたいことはありますか?

かな:この本にはいろんなたくさんの素敵な夢が載っているので、今夢に向かって進んでいる人も、まだ夢がないと思っている人も全ての人に読んでほしいです。
ページ数も多いので、全て読もうと気負わなくてもいいので、パラパラとめくりながら気になるとこだけ読んでいくのもいいと思っています。
それだけでも、夢のヒントであったり、生きるヒントが見つかると思うので、ぜひ手にとっていただけたらと思います。

 

きむ:生きるヒント!それを見つけるきっかけにこの本がなったら嬉しいね!

かなちゃんのデザイナー人生で初めての本の制作で、誇れる一冊になったと思います。
かなちゃん、本当にありがとうございました!

 

 

デザイナー  かなさんのインタビューをお届けしました!

次回は、代表者の一人一人のポートレートのディレクションを務めたカメラマン日比さんにお話を伺います。
公開時には下記SNSでお知らせいたしますので、ぜひフォローしてお待ちくださいね!お楽しみに!

カメラマン日比さんの制作秘話はこちら(2021年7月15日UP!)>>

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