「みんな ちがって 当たり前」大人も子どもも楽しみながら学べる『人間図鑑』


 

2019年9月27日より発売中の『人間図鑑』。
多様性を学ぶ入門書として、楽しみながら学べる一冊です。

今回は、『人間図鑑』の制作秘話を、担当者のいいださんに詳しく聞きました。

 


以下、いいださんとの対談形式でお送りします◎
インタビュアーは広報担当の石井です。以後お見知りおきを。

 


いいださんよろしくお願いします!
よろしくお願いします!
今回、図鑑シリーズの3作目ということですが、人間図鑑を作ろうとなったきっかけを教えて下さい。

絵本のような図鑑シリーズでは、大人も子どもも楽しめるということをとても大切にしています。

なので、前作の寿命や失敗のように「人が生きる上で欠かせない普遍的なこと」をテーマにしたいと考えていました。そんな中で出たテーマの一つが「人間」です。
自分のこと、家族や友達、恋人のこと、みんな興味ありますよね。
いしいさんはどうですか?

めちゃくちゃ興味ありますね。笑
生きていくうえで、自分のこと、周りの人のこと、大きいくくりで言えば“人間”のことを考えない日はないかもしれません!
なるほど。笑
そこからテーマが「人間」に決まり、次に方向性を決めていったのですが、児童書を作るのは初めてのことで、自分の子どもはいないこともあり、“一番身近な子どもの存在=自分の幼少期”を振り返ることでこの本の方向性を決めていきました。今までの自分を振り返った時、自分の勝手な判断で避けてきたことも、知らないだけで知ってみると見え方・価値観が変わるなということが結構あったなあと。
そういったことで自分の世界を狭めていたと大人になってから気付いたんです。

だからこそ、人間の“多様性”をテーマに、自分が子どもの頃に読んでいたら人生変わっただろうなと思える本を作ろうと思いました。

そういった過去の経験からの気付きが、今回の制作の根底にあるのですね。


(『人間図鑑』最初の見開きページ)

 

この図鑑の中では、体のちがいから考え方のちがいまで、様々な人間の項目を扱っていますが、ジャンルの中から、細かい項目を決める基準はあったのでしょうか?
もちろん。1番は、子どもが学校とかでいじめの原因になりうるところ。
あとはこどもが疑問に思うことを優先的に入れています。例えば、生活の面に「名前の由来」の項目が入ってるんですが、名前は今いじめのきっかけになる理由のひとつともされているんです。

 

なるほど。現代の社会性に触れた項目も入っているんですね。

 

はい。それに加えて、網羅性も意識して作りました。
今回の図鑑に関しては、出来るだけたくさんのことに広く触れたいという想いがあったので、「その他のちがい」というページを追加することで、1つの項目程は満たない内容量でもページに加えることができました。


(各カテゴリーに設けられた「その他のちがい」のページ)

 

「その他のちがい」のページがあることで、より多くのちがいを知ることができますね◎

また、今回イラストを担当したのは、イラストレーターの間芝勇輔さん。
やわらかいタッチで、とても和やかな印象がある間芝さんのイラストですが、間芝さんに依頼した理由を教えて下さい。

ナイーブな内容も含まれているので、今回の場合、ポジティブにも見せたくないけどネガティブにも見せたくない、という想いがあって。

間芝さんのイラストは、表情のバリエーションが豊かではないけど、イラストからはあたたかみが感じられて、フラットに見えるイラストだなと感じたことから、間芝さんに頼もうと思ったんです。

 

間芝さんならではの優しくあたたかみのあるイラストは、まさにこの図鑑にぴったりですね。
出てくるキャラクターたちがみんな可愛くて、イラストを見ているだけでも楽しいです!

また、個人的に気になった点で言うと、背景に散りばめられた柄も可愛いなあと◎

背景は身体の細胞をイメージしていて、散りばめられた形は、“人間いろいろあるよね”というところから様々なかたちにしています。

また、今回の図鑑はカラフルな1冊にしたくて。
レインボーフラッグなど、多様性はカラフルな表現がされることから、図鑑全体の色をカラフルにしています。

 

そうだったんですね!カラフルな配色は、楽しみながら読み進めることができそうです◎

また、今回の図鑑全体のテーマは「人間ミュージアム」とのことですが、“ミュージアム”(美術館・博物館)をテーマにした理由は何なのでしょうか?

カラフルな表現がしやすかったことと、今回答えがないものを作ることから、美術作品も答えがないという点で、うまく掛け合わせられないかなと思ったんです。
多様性を伝えやすいのではないかと。

例えば、コミュニケーションのちがいという項目の扉絵では、「すき」っていうタイトルの作品がたくさん並んでいて、タイトルがどの作品も同じなんだけど、作品の内容は全然違っていることから、「すき」にも色んなかたち、表現の仕方があるよっていうことを扉絵で表現しているんです。

なるほど~!多様性という点を上手く表現されていますね。扉絵のそういった点にも注目して見てみてもおもしろいですね。


(同じ名前の作品でも、様々な表現の仕方やかたちがあることを扉絵で表現◎)

 

いいださん自身が気に入っているページはありますか?
死後の世界のページです。
実はこれが最初に作ったページでもあるんです。
死んだらどうなるかとかは、誰も知りえないことなのにこんなにも項目がある。
人間はそれで安心したり、それによって行動に起こしたりしていて。

 

確かに。誰も知りえないことに意味を見出しているのは人間特有ですね。
このページ以外でも、私自身、読んでいて知らないことが本当に多くて、、読み進めていく中でも、多くの新しい発見や学びがあって、図鑑から得た情報を誰かに伝えたくなったりして、、笑

いいださん自身も学ぶことが多かったのでは?

はい。自分自身も制作を通してすごく勉強になりました。
もともと人間に興味があったことから、この図鑑のアイデアは生まれたんですけど、この図鑑の制作中も知っているようで知らなかったことが本当に多くて。
制作を終えて、何か以前と変わったことはありますか?
大体のことが受け入れられるようになりました。
正解とかないなあと思える。いい意味でこだわりがなくなったなあと。
全ての物事に対する受け取り方が変わったように思います。

大人の私たちでも、これまでの考え方や感じ方を今一度考えるきっかけになるなあと、私も読んでいて感じました。

そんな『人間図鑑』、対象年齢は小学校中学年~高学年とのことですが、どういう点からこの設定に?

多様性教育という言葉があって、「ちがいを知ること、理解すること、受け入れて・考えること」の3段階で組まれているのですが、その「ちがいを知る」段階の入門書という感じで設定しています。
なるほど。その対象年齢だと、読んでみると注釈以外の部分にも知らない言葉が出てくるのでは、とも思うのですが?
そうですね。なので大人の人とぜひ読んでほしいですね。
まずは読んでみる、読んでみてわからないことは聞いてみる、より気になることは調べてみる、という流れでたくさんのちがいを知るきっかけにしてほしいです。でも本当は、大人の方にも読んでほしい図鑑でもあります。
多様性が広がってきた今の社会では、大人よりも若い方の方が多様性の部分を身近に感じることができる環境だと思うんです。

多様性という部分に今まであまり触れてこなかった大人の方にも、この図鑑を読むことで、子どもたちとはまた違った感じ方があるのではないかと思います。

確かに。読む人によって見え方、感じ方は本当に様々だと思います。
親子や友達同士など、誰かと一緒に読みながら、お互いにどう感じたかを共有しあうのも良さそうですね◎

 

では最後にメッセージをお願いします。
僕はこれを見て一つ一つの項目を細かく見てほしいとは思っていないんです。
図鑑全体を通して、読み終えたときに“色々違っているんだな”って思ってもらえたらそれでいいと思っています。だから、ピンポイントで“詳しい知識を増やす”、というよりは、広く浅く“たくさんの違いを知ってもらう”ということを意識して作りました。
この図鑑を見て少しでも知るきっかけが増えることで、様々な項目の“ちがい”を通してみんな“同じ”だということに気付いてほしいです。

違うことが普通、当たり前だということに。それがきっかけで子どもたちの世界が広がれば一番いいなと思います。

たくさんの想いや制作へこだわりを聞かせていただき、ありがとうございました!
ありがとうございました。

 

 

様々な項目から人間のあらゆるちがいを集めてイラストで紹介しているこちらの図鑑。

幅広い世代の方々が楽しめる一冊となっています。
ぜひ手に取ってご覧ください!

 

 

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