目には見えない人との温かい繋がりを描く「作家やまもとまき」の似顔絵


今年の12月から、新作の似顔絵に挑戦したWORLD1の似顔絵作家「やまもとまき」。

10年間もの間、似顔絵を描き続け、どのような想いで新しい似顔絵を完成させたのかを聞いていきます。

 

似顔絵作家やまもとまき
(作家 やまもとまき)

 

 

―今回、似顔絵を変えようと思ったきっかけを教えてください

人の魅力ってすごくて、似顔絵を描きながら、そこにずっと惹かれている私がいてて、人の魅力はそれだけで十分な力があって、それを最大限に伝えれる絵を描きたいと思っていました。

似顔絵を10年くらい続けて、お客さまとも繋がれば繋がるほど、その人にとって一生に1枚の宝物にしてくれるかもしれないし、どこまでも本気の想いを託してくださっていることをすごく感じてきたし、その人の人生や想いにみあえるものが描きたいなぁって。

 

(似顔絵を描き始めたときの絵)

 

 

何より、目の前の方のこの魅力をどうしたら、この画面に描けれるんだ〜〜!って思っていて、いつも目の前の人そのものの魅力には敵わない、、!
そんな気持ちが膨らんでしょうがなかったんですね。

具体的に今回の『やまもとまき』似顔絵を形にするにあたっては、かれこれ3年前くらいから、本当に少しずつ絵の研究をしてみていました。

シンプルにその人だけの魅力に集中しようと思いました。
その人だけ描かれた1枚が、心に何らかの感動を届けれることができれば、その人が魅力的で素敵なんだ、ということを、否応無しに伝えれると思ったんです。そんなものを描きたいと思ったことが出発です。

それをするためには、人にもっと寄ったもの・・・
人柄や、奥行き、生きてる存在感とか、そう言うのを描けれたら絵を完成できると思っていてて、しかしそれは本当に絵描きの腕や人間性が問われると言うか、、
けどもうそこに等身大で向き合って挑戦したいな、と言うことで始めてみました。

似顔絵

 

 

 

―どんなところにこだわりましたか?

具体的には、画材・描き込み・構図をこだわりました。
それって、ほぼ全てですね、、笑
以下、少しご紹介まとめてみました。

【画材】
ポスターカラー、水彩、色鉛筆、パステル、少し変わっているのは、胡紛という貝殻の粉、膠を使ってみています。
今回の絵は人によりフォーカスしていくので、物理的にも厚みが欲しいと思っていました。
そこで、盛り上げれるテクスチャーが欲しいと思ったのですが、できる範囲で自然素材で生態系に負荷をかけないものも使いたいと思っていました。そこで貝殻からできた胡紛を使うことにしました。
こちらを膠と水の分量を調整して描きます。

胡紛という貝殻の粉

研究している時に、その膠の量によって、後から消したり削れたりすることを発見して、風化しているような自然な風合いにできました。
他にもポスターカラーや水彩絵の具も使っていてて、鮮やかな肌の色を描いています。それらの絵の具には、絵描きや開発してくれた先人方のあくなきロマンと探究心が宿っていると感じます。
自然だけでなく、近代技術の恩恵ももらいながら、合わせあいながら描いています。

画材

 

【描き込み】
絵の具で人の立体感を丁寧に描写した後、色鉛筆やパステルものせていきます。
整えられた形の上を、調和を大切にしながらも、色鉛筆とパステルを縦横無尽に走らせて、心地よく崩していきます。

似顔絵の書き込み

立体的に描いていく

より立体的に細やかに人をはっきりと描きながら心地よく崩していく描き方は、刻々と変化している時間の中で生きていること、ざわめきの中で生きていること、そんな人や自然の命のあり方に通じているのかなぁ、だから惹かれてこう描いているのかもしれません。

筆で描く

色鉛筆で描く

 

【構図】
画面に人のみのシンプルな構成になっているので、構図も計算して入れています。
人柄による仕草や、関係性による寄り添い方を考えて、本当に些細な違いですが、どう人を配置して描こうかなぁと考えて決めます。その時々で変わることもありますが、できるだけずっとその人らしいと思ってもらいたいと思っているので、できるだけ人柄や関係性など教えてもらえたり、希望の配置とか教えてもらえたら嬉しいです。

似顔絵の構図を考える

完成した似顔絵

 

 

 

―大変だったことはありますか?

大変だったことは、色味のトーンと、画材の癖を分析して狙って扱えるようになることでした。

色味のトーンを研究

【色味のトーン】
人の魅力や存在感をふんだんに出したい!と思い、力強いトーンにするかですごく迷っていて、自分て何なんだろう、、と迷路に迷うこともありました。

これまで描かせていただいた似顔絵をみて、お客さまに「やさしくて、温かい絵ですね」「ほっこりして、癒されるんです」と言ってもらえていてて、仲間たちにもそういうところ私の良いところだよ、と伝えてもらって、『やさしい』というのが自分がどう変化しても変わらない個性だから、これならずっと描いていけると思って、やさしさを伝えれるような、人を柔らかいトーンでまとめていこう!と決まることができました。

色味のトーンを研究

 

【画材の癖】
盛り上げ材に使っている、胡粉が、塗ったと時と乾いた時で、すごく色味が変わってしまうんですね。また、膠と水の量によっては、消しゴムをかけても消えなかったりして、、

その予測できないところも面白みであると思うのですが、狙ってないところを狙いたいというか、、1枚1枚の絵のクオリティーをあげていけるように、癖の理解を分析しました。

色味の変化の幅や、膠と水の分量によってどんな剥がれ方をするのかなど、表にしてみたりしました。
まるで英語が話せないのに外国の方と一緒に住んで、コミュニケーションをし続けて、面白い予測できない言動にもびっくりしながら、勉強したりお互いの理解をちょっとずつ深めていくような、そんな感じで、絵を完成させました。

色味のトーンを研究

 

 

 

―嬉しかったことはありますか?

嬉しかったことは、娘さんが1歳の誕生日を迎えるから、家族の絵を描いて欲しいと頼まれた時のことです。
家族みんなに可愛がられてて、家族みんなでお祝いの席を持ちたかったのですが、おばあさんが体調を崩されて入院されて、家族みんな揃ってお祝いをできないかもしれない、とのことでした。
だからこそ、みんなが揃っている絵を描いて欲しいと言ってもらえ、そんな大切な気持ちを託してくれ、応えたいと思い、描かせていただきました。

お誕生日の当日、おばあさんは外出できなくてみんな揃えれなかったけど、お見舞いに絵を見せたら、喜んでくれたそうです。
その時の報告もいただけて、私も温かい気持ちをもらいました。
そんな似顔絵だからこそできるって言ってもらえて、お祝いのお手伝いができて嬉しかったです。

娘の1歳の誕生日に描いた家族の似顔絵

 

 

―面白いエピソードがあれば教えてください

面白いエピソードは、ウェルカムボードを描かせていただいた時に、新婦さんの前歯が少し出ているのが可愛くてチャームポイントで、その前歯も気に入っているとのことで、どうやったらそのままの可愛さで、うまく出て見えるかな、と思って描いたら、それを描いたことを喜んでいただけたことです。

すごく笑いながら面白がりながらも喜んで頂けて、私もよかった!と嬉しくなりました。
なかなか歯が出ているとって、女性からすると気になったりするかもしれませんが、(私は可愛いと思ってしまうのですが)、その人だから持っている個性を魅力的に描いて伝えたいな〜〜と思っています。

あきよさんご夫婦

完成した似顔絵

 

―どんな人に手にとってもらいたいですか?

人生で大切なウェルカムボードや、ご両親への贈り物、大切な人への贈り物や、それぞれの記念日に、、

もちろん自分に対してもですが、人へ届けたい想いをのせたものを探している方に、使っていただけたら嬉しいです。

似顔絵ウェルカムボード

 

 

―自身が描く似顔絵で、どんな価値を届けたいですか?

似顔絵は人の輪やつながりがあって、完成します。
究極、似顔絵は、言ってしまえば、紙と画材が乗った1枚の紙です。
それは、生活を営む中で、実用面でいうと、なくても良いものだったりもします。
だからこそ、そこに価値はあるのか?人が生きる上で、必要なのか?その問いはずっとありました。

人は人と繋がって生きていけて、その間にある温かさに触れることで、それこそが人の心に水を与えることができて、それこそが生きる力になると実感しています。
その人との温かい繋がりは目には見えないけど、本当に大切なもので、それを似顔絵は、ただ1枚の紙に人を描くことで、他のものでは表しきれない、人の想いを最大限に表現できて、伝えることのできる、目に見える“もの”にすることができます。

結婚式のご両親プレゼント

家族の似顔絵

 

私は似顔絵を通して、たくさんの暖かな人との繋がりを感じたり、込めようと思えばどこまでも深く強く込めることができる、似顔絵が持てる想いの力を、実感してきました。
その想いの芯は、描かせていただくお客様にいただきます。
そして、私の役割としては、その想いと一緒にありながら、描かれた人の魅力を最大に描くことです。それができれば、その人そのものを肯定する力になって、それは、頼んでくださった方の想いを乗せることができて、その人に向かう、無数の愛って言えるんじゃないか?と信じています。

似顔絵を通して、描かれた人、そしてその奥に見えてくる温かい繋がりを感じてもらいたい。毎日の暮らしに寄り添いながら、喜びを感じながら、生きる力にして欲しいです。
そんな価値を見出したいです。

家に飾られた似顔絵

家に飾られた似顔絵

 

―使ってくれる人へのメッセージをお願いします

今しかない時を、大切な人と温かさ伝え合っていってもらえますように。
私もそれをお手伝いさせていただけて、応援させてもらえたら嬉しいです。

似顔絵プレゼント